不在者が相続人にいる場合の遺産分割
遺産分割の話し合いを行う遺産分割協議は相続人全員が参加し、合意を得ることで成立します。しかし、相続人の中に行方不明の方がいて手続きが滞ってしまうこともあります。そのような際の手続きについてご案内いたします。
行方不明者の失踪宣告をする
行方不明である相続人について、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てを行うことが出来ます。失踪宣告を行うには下記のいずれかに該当する必要があります。
- 普通失踪:従来の住所地を去ってから7年間生死が明らかでない
- 危難失踪:戦争や遭難など危難が去ってから1年間生死が不明である
失踪宣告の申し立てが認められると、不在者は死亡したものとみなされます。死亡したとみなされる日によって相続人が変わってくる場合があるため、慎重に確認しましょう。
失踪宣告された際、死亡したとみなされる日
- 従来の住所地を去って7年間生死が不明であった場合:生存確認が取れた最後の日より7年経過した時点
- 危難に遭遇し行方が分からない場合:危難が去った時点
(例)行方不明者の失踪申告を申し立てた場合
被相続人:A(1年前に死亡)
Aの相続人:B、C、D(妻と子Eがいる)
*Dは行方不明から10年間が経過(普通失踪)
被相続人よりも相続人が先に亡くなっている場合、その子や孫が代襲相続人となります。
今回、相続人Dは10年前から行方がわからず、失踪宣告の申し立てを行ったところ、失踪申告がされ、3年前に死亡したとみなされました。つまり、Dは被相続人よりも先に亡くなっているとされ、Dの相続権はDの子供であるEへ代襲され、Eが代襲相続人として、遺産分割協議に参加することになります。
被相続人:A(1年前に死亡)
Aの相続人:B、C、D(妻と子Eがいる)
*Dは行方不明から7年間が経過(普通失踪)
被相続人よりも相続人が後に亡くなった場合、相続人が遺産を引き継ぎ、その後配偶者や子が分割するようになります。
今回、相続人Dは7年前から行方がわからず、失踪宣告の申し立てを行ったところ、失踪申告がされ、半年前に死亡したとみなされました。この時、Dは被相続人が亡くなった1年前より後に亡くなったとされるため、Dが遺産を受け取ることになります。そして、その遺産をDの相続人が引き継ぐため、遺産分割協議にはDの妻とEが参加することになります。
不在者の財産管理人を選任し、遺産分割をする
行方不明の相続人がいる際、家庭裁判所へ不在者財産管理人の選任を申し立てし、選任された不在者財産管理人によって、不在者の財産を管理、保存することが出来ます。不在者財産管理人は家庭裁判所の権限外行為許可を得たうえで、遺産分割協議に参加することが可能となります。失踪宣告の要件を満たない場合や、失踪宣告を望まない場合に利用されます。